恋する5秒前~無愛想なキミと~

桜井君は立ち止まると私の方へ体を向けた。そして、


「賢司がいるから大丈夫だろ。あぁ見えても賢司のヤツ、ケンカしても負けたこと一度もねぇからな」


「そ、そうなの?意外だな……」


人懐っこそうな顔立ちをしている賢司君。


「賢司は空手をやってるからな、アイツに絡んでもやられるだけだからな」


そう言いながら笑う桜井君。


優しそうな雰囲気の彼がケンカをすると強いなんて、想像がつかないよ。


「だから余計な心配すんな、行くぞ」


「あっ、うん」


そうだ、今はあの子達を見つけることの方が先だ。


人混みの間をかき分けるようにして歩いて行くと、屋台が並んでいるところまでやって来た。


「もしかしたら、アイツ等ここにいるかもしんねぇな」


「さっき通ったとき、未来に寄りたいって言われたんだけど、今日はダメだよって言ったからかな」


今日は里美ちゃんに「屋台の食べ物なら良いけど、オモチャは買わないで」と釘を指されていたんだ。


屋台を覗きたくて勝手に行っちゃったのかなぁ?


「なぁ、ここから手分けして捜そうぜ。このタコ焼き屋の前を待ち合わせにしようぜ」


「うん、分かった!」


それから桜井君と別れて翔と未来がいないか名前を呼びながら捜すけど。


待ち合わせ場所のタコ焼き屋の前へ到着した私は、桜井君が戻ってくるまで待つことに。


桜井君、あの子達を連れてきてくれるかな?


スマホを手に持ちながら待つこと数分。

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