恋する5秒前~無愛想なキミと~
「悪い」
桜井君は電話の着信に気づいてくれて、私からパッと体を離してくれた。
私は軽く首肯くと、スマホの通話ボタンを押して耳に充てた。
「はい、もしもし」
「あぁ、環?私、香奈だけど」
電話の相手は香奈だった。
「どうしたの、香奈?」
「翔と未来、見つかったよ!」
「本当に?見つかったの?」
「真央ちゃん達が屋台のオモチャ売場のところに並んでいたのを見つけてくれたのよ」
「オモチャ売場?」
「そう、あの子達、なにか欲しい物があったみたい」
「そうなんだ、でも良かったぁ!」
思いがけない香奈からの知らせに私の声は大きく弾んだ。
「あのね、桜井君。翔達が見つかったって!」
心配そうな顔をして様子を伺う彼と目が合い報告すると
「良かったな、見つかって」
ホッとした表情を見せた。
「ちょっと、環。聞いてるの?」
いけないっ。まだ香奈と通話中だったんだ!
「ご、ごめん。香奈、それで翔達は今、どこにいるの?」
早くあの子達のところへ行かなくちゃ!
「二人共私のところにいるわよ。だから早く戻って来なさいよ。それより環、あんた今、誰といるの?」
勘の鋭い香奈に気づかれていたみたい。
っていうか、香奈と電話中に桜井君と話していたから怪しまれるのも当然か。
「その……詳しいことは後で話すから、私も直ぐにそっちへ行くから」
私は一方的に話をして通話ボタンを切った。
「あの桜井君。私、香奈の戻るから。樹里さん達のところへ戻ってあげて!」
まだ花火は打上がっていないから間に合うはず。
でも桜井君の返事は……。