恋する5秒前~無愛想なキミと~
「俺もお前と一緒に行くから。この人混みの中、お前を一人で行かせるわけにはいかねぇだろ」
「わ、私なら大丈夫だよ」
桜井君は私と一緒に行くと言いだした。
こんなところで言い争うのもみっともないし、早くあの子達の元へ行ってあげないと!
「じゃあ、桜井君。行こうよ」
「あぁ」
私達は歩き始めた。お互いに無言のまま歩き続けていると、桜井君が不意に立ち止まり、口を開いた。
「なぁ、水野。小森達はどの辺にいるんだよ?」
「えっと、場所はね……」
河川敷沿いにある大きな芝生が生えてるところにブルーシートを敷いていると香奈が教えてくれたんだ。
ここから歩いて5分もかからない場所にあるみたい。
香奈から教えてもらった場所を説明すると、桜井君は再び歩き始めた。
そして、彼の後を追うようにして私がついていく。
ここは桜井君の地元だもの。簡単に説明しただけなのに、直ぐに理解してくれて助かったよ。
「水野、目印ってどんなのだよ?」
桜井君が歩きながら私に再度確認する。
「河野君がウチワを持って立っていてくれるんだって、それが目印なの」
香奈のお気に入りの河野君が目印になってくれているんだ。
「へぇ、河野も来てるのか」
桜井君はボソッと呟くと、
「花火の打上げまであと少しだな、水野、急ぐぞ」
「うん、分かった」
桜井君はスマホの画面を見ながら私を促した。