恋する5秒前~無愛想なキミと~
◇ウワサの真相

「環、おはよう!」


「あっ、香奈。おはよう」


長かった夏休みも終わり、今日から新学期に入った。


暦上は9月でも、まだまだ夏は終わってはいない。


朝から暑くてバテぎみの私。


久しぶりに学校へ来たけれど、皆相変わらず元気だなぁ。


部活の練習で真っ黒に妬けている人や、髪型を変えたのか別人になっている人もいる。


「環ちゃん、おはよう!弟さん達は元気にしてるの?」


「あ、真央ちゃん!花火大会のときは迷惑を掛けちゃってごめんね」


翔と未来を見つけてくれた真央ちゃんに改めてお礼を言った。


「ううん、迷惑だなんて謝らないで。あの時は偶然あの2人を見つけただけなんだから」


心優しい真央ちゃんは、そう言って笑顔を見せた。


「私ね、花火大会に行って良かったなって思ったの」


頬をほんのり赤く染めて話し出す真央ちゃん。


「良かったって、なにが?」


香奈が訪ねると


「あのね」


真央ちゃんが周りを確かめると声を潜めながら


「私ね、桜井君のこと好きになっちゃったの……」


「えっ!……マジで?」


驚く私と香奈。


「うん、そうなの。今までの桜井君ってちょっと近寄りがたいオーラを出してたでしょ?でも、あの花火大会で環ちゃんの弟さん達に優しく接する姿を見ていたら、なんか良いなあって思っちゃったんだ」


クラスの男子と話している桜井君を、うっとりとした表情で眺める真央ちゃん。


無愛想イケメンのギャップにまんまと嵌まってしまった真央ちゃんは話を続けた。


「桜井君のことを好きになったのは私だけじゃないと思うよ。あの時来ていた女子は皆、桜井君のこと好きになってるんじゃないかなぁ」


「ええーっ!本当に?」


真央ちゃんの爆弾発言に2度もびっくりするとは思いもしなかったよ。

< 195 / 297 >

この作品をシェア

pagetop