恋する5秒前~無愛想なキミと~
「お互い、こんなに仲が良いなら付き合ってみようかって隼人とそんな話しになって付き合ってみたけど、やっぱり無理だったの」
「どうして無理だって分かったの?」
「だって、隼人は私の家族みたいな存在なんだもの。恋愛感情なんて全然湧かなかったの。隼人も同じことを言ってたけどね」
「だから別れたの?」
「う~ん、別れたっていうか、元の幼なじみの関係に戻っただけ」
「そうなんだ」
瀬戸君が言ってたことは間違ってなかったんだ。
「でも、あの時の隼人は恐かったなぁ。噂話を聞いた隼人は物凄く怒ってね、噂を流した犯人を捕まえて謝らせてやるんだって意気込んでね」
「それで、桜井君は犯人を捕まえたの?」
あんな噂を流されたら誰だって怒るよ。
「ううん、犯人探しなんかしたら大騒ぎになるだろうし、言いふらした本人はもっと喜ぶかもしれないでしょ?」
同意を求めてくる樹里さん。
「うん。そうかも」
樹里さんの意見に頷くと彼女は再び口を開いた。
「時間が経てば皆、噂話なんか忘れちゃうんだから、犯人探しは止めようって隼人に言ったの」
「それで桜井君はなんて言ったの?」
「俺はなにを言われても構わないけど、私が辛い思いをするのは耐えられないからって。でも私の意見を尊重して犯人探しは止めてくれたんだ」
「そっか、止めてくれたんだ」
「もう、誰も信用できないって言ってた隼人の顔、今でも覚えてるよ。悔しそうな顔をしててね、その後からかな、隼人が滅多に笑わなくなったの」
そっか、桜井君も辛い思いをしていたんだ。
根も葉もない噂話を流されて2人はどれだけ傷ついたんだろう?
桜井君がいつもつまらなそうな顔をしたり、無愛想な態度をとるのは、この事が原因なのかな?