恋する5秒前~無愛想なキミと~
ふとグラウンドを見ると皆が1ヶ所に集まって先生の話を聞いていた。
「そろそろ授業が終わるんじゃない?」
グラウンドの隅に設置された時計を見ると、後5分程で授業が終わろうとしていた。
「あっ!香奈が走っていたのに、応援しなかったよ」
悔やむ私に
「ごめんね、私が色々話しちゃったから」
樹里さんが私に謝ってきた。
「私が最初に聞いたんだから、梁瀬さんが謝ることはないんだよ。でも、梁瀬さんも桜井君も悔しかったよね」
「うん、その当時はショックで学校へ行くのが恐かったけど、隼人が付いていてくれたしね」
「……そう」
「でも、自分が間違ったことをしていなければ、いつか誰が分かってくれるって言い聞かせて、ここまできたから。今は言いふらした人のことも恨んでないよ」
「梁瀬さん」
私を見つめる彼女の眼差しは、とても強い決意を帯びていて、キラキラと輝いていた。
樹里さんは、私よりずっと大人だな。それに引き換え私は自分の気持ちにさえ……。
「そろそろ教室へ戻ろうか?」
「うん」
樹里さんに促されて、椅子から立ち上がると
「あのね。私、最近彼氏が出来たの」
「えっ!本当に?どんな人なのって、わあっ!」
ガシャンと音をたてて倒れていく椅子を慌てて起こした私。
樹里さんの爆弾発言に驚いて椅子をひっくり返しちゃったよ。
「この前の花火大会で一緒にいた人なんだけど」
そう言えばあの日、樹里さんと一緒にいた男子がいたよね。
確か、名前は……思い出せずにいると