恋する5秒前~無愛想なキミと~

目を閉じて、ただひたすら祈っていると、ワアッと沸き上がる歓声に私は目をそっと開けた。


あっ……桜井君だ。


相手チームからボールを奪い取った桜井君は、そのままドリブルをしながらゴールまで突き進んだ。


そして、スリーポイントシュートが打てる位置に着いた。


さっきまでの歓声はどこへいったのか、皆、桜井君の様子を静かに見守っている。


狙いを定めた彼は、腕をスッと伸ばすとボールをゴール目掛けて投げ出した。


「お願い!入って!」


私は祈るような気持ちで大声で叫んでいた。


周りからも大きな声援が聞こえてくる。


ボールは綺麗に弧を描きながら飛んでいき、そして……。


ボールは見事にゴールポストの中に吸い込まれて行ったんだ。


「やったぁ!入ったぁ!」


同時に沸き上がる歓声。


その声を遮るようにして試合終了のホイッスルが鳴り出した。

< 227 / 297 >

この作品をシェア

pagetop