恋する5秒前~無愛想なキミと~

「瀬戸君、あのね……私、その……」


決心したのに、言葉が出てこないよ。


「その、私、私ね……」


瀬戸君は私が話始めるのを待っていてくれてる。


ちゃんと気持ちを伝えるって決めたんだから、言わなくちゃ!


頑張れ、私。


ギュッと握りこぶしを作って気合いを入れると、


「あ、あのね。私、瀬戸君とはこれ以上付き合うことが出来ないんだ。ごめんなさいっ!」


そう言って頭を下げた私。


しばらくの沈黙の後


「……桜井の事が好きなんだろ?」


「へっ?」


いきなり的を得た事を言われて、変な答え方をしちゃったよ。


「水野さん。桜井の事が好きなんだろ?」


「瀬戸君、どうしてそれを?」


「自分の好きな人がどう思っているのかなんて、その人の事を見ていれば分かるって」


そう言って笑う瀬戸君。


でも、笑っていても彼が淋しそうに見えるのは気のせいじゃないよね?


「瀬戸君はいつから知っていたの?」


「夏休みに入る前かな?」


「そんな前から?」


「うん。だから、水野さんからOKの返事を貰ったときは、まさか、俺と付き合うなんて思ってなかったから、正直言ってびっくりしたけどね」


「そうだったんだ」


だから、瀬戸君は何度も私に確認してきたんだねって、納得している場合じゃないよ。

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