恋する5秒前~無愛想なキミと~
「だから、桜井とのことは気にしないようにしてさ、少しでも可能性があるのなら、水野さんに振り向いて貰えるように、俺が頑張るしかないなって心に誓って今までやって来たけど……」
そう言って私の顔をチラリと見た瀬戸君は、大きくため息をひとつ吐くと
「やっぱ、人の心を動かすのは簡単じゃないんだなって実感したよ」
言い終わると微笑みながら私を見つめる瀬戸君。
「……」
私だって瀬戸君の事を好きになろうと努力したんだよ。でもね……。
そんな事を今更言ったとしても、言い訳にしか聞こえないよね?
なんて応えたら良いのか返答に迷っていると
「そんな顔すんなよ」
「いたっ!」
瀬戸君にデコピンされて額に手を充てた。
「桜井の前でそんな顔をしたら笑われるぞ」
「私、そんなに変な顔をしてるの?」
鏡がないから確認できないけど、どんな顔をしてたんだろう?
「別に変な顔をしてる訳じゃないけど。まあ、そんな顔をさせるのは、俺にも原因があるんだけどね」
苦笑いをする瀬戸君。