恋する5秒前~無愛想なキミと~
「ごめんな、水野さん。俺が皆の前でコクらなければよかったんだよな」
「そんなことないよ」
「そうしたら水野さんも俺と付き合うなんて言わなかったと思う」
「そんなこと言わないで。最終的に決めたのは私だよ、瀬戸君は何も悪くないよ。
自分の気持ちに嘘をついていた私の方が悪かったんだよ。謝るのは私の方だよ。本当にごめんなさい」
「俺だって、自分の気持ちばかり水野さんに押し付けてさ。周りが見えていなかった俺も悪いんだよ。本当にごめんな」
お互いに頭を下げて謝った。
「じゃあ、俺達は今日で終わりだな」
そう言って淋しそうな顔をして笑う瀬戸君。
「うん。これで終わりだね」
私もつられて笑うけど、複雑な気分。
私達の間に乾いた風がスウッと通り過ぎていく。
「短い間だったけど、俺さ……水野さんと付き合えて凄く楽しかった、本当にありがとうな」
満面の笑みを見せる瀬戸君は、いつもの王子様スマイルだ。
「私も瀬戸君と付き合えてとても楽しかった。水族館へ出掛けたこと今でも良い思い出だよ」
私も笑顔を返した。
「水野さん、最後にひとつ聞いてもいいかな?」
瀬戸君が気まずそうな顔をして私の様子を伺っている。