恋する5秒前~無愛想なキミと~
◇恋する5秒前
退屈な終業式も終わり、体育館から教室へと戻る途中で廊下を一人で歩いている桜井君の姿を見つけた。
チャンス到来!
「あっ、あのっ」
足早に彼の後ろまで近寄りながら声を掛けたところで
「なぁ隼人、今日の部活ん時さ……」
「何だよ、宏樹」
タイミング悪くやって来たバスケ部の男子に呼ばれて、桜井君はどこかへ行ってしまった。
あ~あ、せっかくのチャンスだったのに。どうして上手くいかないんだろう?
一人、膨れる私。
朝から桜井君の様子を伺っていたけれど、この日も彼は一人でいることはなくて、なかなか話し掛けられないでいた。
桜井君は、いつもなら早く登校してくるから、それに合わせて私も早く来たけれど、今日に限って彼は遅く来たし。
誰かが私の邪魔をしているとしか思えないよ。
ホームルームが終われば、部活がない人は下校となる。
帰りに桜井君に声を掛けられるか、どうか……そこが勝負だよね。
それが出来なければ、桜井君に告白をしないまま冬休みに入るんだ。
せっかく香奈と瀬戸君が背中を押してくれて決心したのになぁ。