恋する5秒前~無愛想なキミと~
「アイツと、未来と約束したんだ。手紙の返事を書くって」
「未来と約束?」
「あぁ、夏休みに図書館で会ったときにな」
夏休み!
そんな前から約束していたなんて……私もすっかり忘れていたよ。
未来は覚えているのかなぁ?
手紙を渡したらどんな反応をするんだろう?
「水野、頼むな」
「うん、ちゃんと渡すからね」
手紙を受け取りながら桜井君に笑顔を見せた。
「じゃあ、俺。部活があるから」
「あ、うん。頑張ってね」
「水野、こんなところまで呼び出して悪かったな」
頭をクシャクシャッと掻きながら決まり悪そうな顔をしている桜井君。
「ううん、そんな私は大丈夫だから、謝らないで、ね?」
彼を安心させようと私はもう一度笑顔を見せた。
「じゃあな、水野。気をつけて帰れよ」
「ありがとう、桜井君。この手紙、ちゃんと渡すからね!」
手を挙げて応えた桜井君は、振り返ることもなく行ってしまった。
あ~あ、とうとう最後まで言えなかったなぁ。
せっかくチャンスだったのに、私の意気地無し!
ガックリ肩を落としていると、桜井君から預かった白い封筒が目に入ったんだ。