恋する5秒前~無愛想なキミと~

夕方、未来と翔を迎えに行き、家に帰ってくると私はカバンの中から封筒を取り出した。


「未来、ちょっといい?」


「なに?タマちゃん」


テレビの前でウロウロしていた未来を呼んだ私は、彼女の前に封筒を差し出した。


「はい、これ」


「ん?なにこれ」


「未来がずっと待っていた手紙の返事だよ」


「返事……?あっ!このお手紙、桜井のお兄ちゃんから?」


「そう、遅くなってごめんなって言ってたよ」


封筒を手に取った未来は満面の笑みになり


「やったぁ!お返事やっと来たんだ!翔くーん!お兄ちゃんからの返事が来たよぉ」


「あっ!未来ちょっと待って!」


未来は翔の部屋へと行ったきり、そのまま出てこない。


なにやってるんだろう?あの2人は。


夕御飯の支度をしながら私はピリピリしていた。


「未来、翔!ご飯できたよ!」


翔の部屋まで行った私はドアをノックしながら声を掛けた。


「ごめん、姉ちゃん。直ぐ行くから」


翔の返事が聞こえてきて2人が部屋から出てきたのは、しばらくしてから。


「わあ、今日はカレーだぁ」


「いただきます!」


2人は何事もなかったような顔をしてカレーを食べていた。


桜井君の返事。


いったい、なんて書いてあったんだろう?読ませてくれないかなぁ?


私は心の中でモヤモヤしながら熱々のカレーを口に運んでいた。

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