恋する5秒前~無愛想なキミと~
「俺の話をちゃんと聞かない罰」
笑いながら言う桜井君。
「ごめんなさい、ちゃんと聞きます」
私が謝ると彼は話を再開したんだ。
「いつも放課後になるとお前を見かけたんだよ。よっぽど焦っているのか慌てた様子で廊下を走ってるところをさ」
「そう?廊下を走っていた記憶はないんだけどな」
力なく笑うと
「まあ、ほぼ毎日走ってたぞ」
「そ、そう」
「まあ、最初は変な女だなって見てたんだけど、いつしか俺の中では気にならなくなって忘れてた」
「良かった、忘れてくれて」
自分ではどんな風に走っていたのか確認できないもの。
変な女だなんて思われるくらいだから、忘れてくれて良かったよ。
ホッと胸を撫で下ろしていると話しはまだ続いていたみたい。
「2年になったときお前を教室で見かけて思い出したんだ」