恋する5秒前~無愛想なキミと~
「えぇっ!思い出しちゃったの?」
思わず大きな声を出してしまい、周囲を通る人達が怪訝そうな顔をしていた。
「ご、ごめんね。ちゃんと聞くから」
先に謝ると
「しょうがねぇな、後少しで終わるから」
今度は私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「気になった俺は水野に話しかけようか散々迷ったけど出来なくてさ、あの日お前とぶつかってケガをさせたとき、これはチャンスだと思ったんだ」
「チャンス?」
「水野と話せるチャンスってこと」
「だから私が断っても、桜井君は家まで送るって言ったんだ」
「まあな。最初はバイトか習い事でもしてるのかと思ってたけど、一緒に帰ってみてお前がどうしてあんなに急いで帰るのか理由が分かってから俺の気持ちが変わった」
「変わった?」
「あぁ、変な女から好きな女に変わった」
「えっ!それって本当なの?」
思わず聞き返した私。
桜井君が私のことを好きだって……
嘘を、ううん、冗談を言ってる訳じゃないよね?
「俺が嘘をついてると思ってるのかよ?」
顔を曇らせる桜井君。