恋する5秒前~無愛想なキミと~
「香奈。それが、どうしたの?」
話が見えなくて聞き返すと
「その時の桜井君の顔がさぁ……ものすごく不機嫌そうな顔をしてて、山崎君の事を睨んでるんだもの」
「そ、そうなの?気がつかなかったよ」
「俺の彼女に話し掛けんなオーラが出てて、いやぁ、あれはすごかった!」
「でも帰るときに桜井君と話したけど、何も言ってなかったよ」
「そんな事言うわけないじゃない!俺が嫉妬するから話し掛けんな……なんて桜井君なら口が裂けても言わないと思うよ」
きっぱりと断言をする香奈。
鼻息荒く、自分の意見を述べるとカップの中の珈琲を飲み干した。
「でも、そんなに嫌な思いをするなら私に言ってほしかったなぁ」
「えっ、それはどうしてなの?環」
「桜井君にこれ以上嫌な思いをさせたくないの。瀬戸君の時だけでたくさんだよ」
あの時だって、桜井君はかなり精神的にダメージを受けていたみたいだし。
山崎君と話をしているだけで彼が嫌な思いをするのなら、今後いっさい山崎君とは話さない方がいいのかも。
「桜井君って、けっこう束縛したがるタイプなのかな?」
「うーん、どうだろ?そういうタイプには見えないけどね」
香奈の意見に首を傾げる私。
桜井君は束縛するタイプじゃなくて、心配症なのかもしれないなぁ。