恋する5秒前~無愛想なキミと~

翌日。


「おはよ、桜井君」


「……はよ、環」


桜井君とはいつも、駅の改札口の前で待ち合わせをしているんだ。


「ごめんね、遅くなっちゃった。待ったでしょ?」


「別に、待ったうちに入んねぇよ」


「朝から、お母さんに色々頼まれちゃって、家を出てくるのが遅くなっちゃったんだよ」


「何を頼まれたんだよ?」


「ゴミだしとか、洗い物とか色々」


朝の主婦業は忙しいんだよ。


支度の遅い未来と翔に声を掛けながら、家事をするのは大変だ。


「まあ、家のことなら仕方ねぇだろ」


「うん、でも朝から疲れちゃったよ。あ~あ、今度のお休みの日くらい一人になりたいなぁ」


改札口をくぐり抜けて、ホームまでの通路を歩いていく。


思わず本音を漏らしていると


「なぁ、環」


「なに?桜井君」


「今度の日曜日、予定を空けられるか?」


「……予定?どうして?」

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