恋する5秒前~無愛想なキミと~
「私、映画を観に行きたいな」
「映画?」
「うん、この前公開したアニメの映画なんだけど、最新作だから観たいなって前から思ってたんだ」
海外の有名なアニメーション会社が公開している人気アニメ。
シリーズ物のそのアニメは今回のお話で一旦終了してしまう。
だから余計に観たい。
私はそのお話が大好きで過去のお話はDVDを持っていて、家で何度も観ているんだ。
未来と翔もお気に入りのお話。
でも、桜井君なら興味がないかもしれないなぁ。なんて返事が返ってくるだろう?
「俺は特に観たい映画はねぇから、そのアニメでも観に行くか」
「ホントに?いいの?」
「あぁ、いいって言ってんだろ」
「ありがとう!桜井君」
満面の笑みを見せながらお礼を言うと
「…………」
桜井君は耳を赤くしながら黙っちゃった。
もしかして、照れているのかな?
やだな、私も恥ずかしくなってきたよ。
車内を見渡すと、まだ朝早い電車だからか乗客もまばらで寝ている人が多い。
シンと静まり返っている車内で聞こえてくるのは私達の声だけ。
乗客の人達から見て、私達はどんなカップルに写っているんだろう?
桜井君と一緒に歩いていると、時々感じる女の子達の視線と声。
当然、聞きたくない言葉も聞こえてきてしまうんだ。
だからかな?
つい、周りの反応を確かめてしまうんだ。