恋する5秒前~無愛想なキミと~

週末の日曜日。


今日は運良く里美ちゃんの仕事がお休みの日。


私は待ち合わせ場所の駅に着いて桜井君の姿を探した。


あっ!いた!


やっぱり桜井君は目立つなぁ。


身長が高いから遠くから見ても、彼だと直ぐに分かる。


端正な顔立ちの彼の存在感は半端ない。


でも近づくなオーラが出ていて、気軽に話し掛けられる雰囲気は持ち合わせていない。


まあ、そこが桜井君らしいんだけどね。


今日は桜井君と初めてのデート。


待ち合わせ場所は駅にしたんだ。


「俺、水野ん家まで迎えに行くよ」


「そ、そう?」


最初は迎えに来る予定でいたけれど、


「桜井君が家に来たら未来達も一緒に行きたがるからダメだよ」


と、里美ちゃんに待ち合わせ場所を他にしてほしいと言われて急遽決めたんだ。。


「お待たせ、桜井君」


「あぁ、水野。……来たか」


スマホに目を落としていた桜井君が顔をパッと上げた。


桜井君の私服姿、初めてみたな。


パーカーにジーンズというシンプルな組み合わせ。


有名ブランドのスニーカーを履いていて、壁にもたれ掛かる彼を女の子達が歩きながら見て行く。


やっぱり、かっこいいし、何を着ても様になるなぁ。


その場で立ち尽くして桜井君に見惚れていると


「おい、水野。ボーッとしてんなよ、行くぞ!」


「あ、うん。電車に乗り遅れちゃうね。行こうか?」


改札をくぐり抜けた途端、サッと私の手をつないだ桜井君。


「わっ!ちょっと待って!」


私は、急に手をつながれて思わずびっくりして声を上げてしまった。

< 273 / 297 >

この作品をシェア

pagetop