恋する5秒前~無愛想なキミと~

「何だよ、水野」


「あの、そのっ……手!」


「別にいいだろ?……俺達付き合ってるんだし」


「うん」


桜井君は不機嫌そうな顔をして、ボソッと呟くと、私の手を引くようにして歩きだす。


ギュッと強く握られた手から伝わってくる桜井君の様子。


もしかして、桜井君も緊張しているの?


だとしたら、私も桜井君と同じくらい、ううん。それ以上に緊張しているんだ。


休日ということもあって、駅の中は行き交う人達で溢れていた。


その間をくぐり抜けて私達は電車に乗り込んだ。


電車に乗ってやって来たのは、この辺りでは一番大きな街で、大型商業施設や映画館があってとても賑やかな場所。


映画館に到着してチケットを買うことに。


「この映画だろ?」


電工掲示板に映画の上映時刻が表示されていて、桜井君が指差しながら私に聞いてきた。


「うん、そう。あの映画だよ」


私が首肯くと、桜井君はチケット売場を見渡した。


「今日はすげぇ混んでるな」


チケット売場には行列ができていた。


「ホントだ。今日はいっぱい人がいるね」


親子連れからカップル、友達同士で来ている人達で館内はいっぱいで賑やかだ。

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