恋する5秒前~無愛想なキミと~
*私の彼氏は
歩くこと15分。
「着いたぞ。俺が連れて来たかったところはここだ」
桜井君が急に立ち止まったかと思うと、振り向いて私に声を掛けてきた。
「見てみろよ、環。すげぇ、綺麗だろ?」
「わぁ……ホントだ。綺麗!」
視界に入ってきたのはピンク色に染まった並木道。
両側に植えられた木々がピンク色のトンネルを作っていた。
「この花は桃の花?」
季節は3月上旬。
3月に入ったとはいえ、風はヒンヤリとしていて、まだ肌寒い。
この時期に咲く花と言えば桃の花だと思うんだけど……。
桜井君の口から出た答えは
「いや、この木は河津桜って言うんだ」
「河津桜?初めて聞いたよ。そっか、桜なんだぁ」
「あぁ、俺も初めて見た」
今まで見てきた桜とは色が違う。
濃いピンク色をしていて、その鮮やかな色がパッと目を引く。
並木道の両側には出店もあり、観光客が来ていて、とても賑やか。
「環、行くぞ」
桜井君はそう言いながら私と手を繋ぐと歩き始めた。