恋する5秒前~無愛想なキミと~

「ごちそうさん。俺、そろそろ帰るから」


桜井君が自分のカバンを持って立ち上がった。


リビングの壁時計で時間を確認すると、もうすぐ7時半になるところ。


長い時間、彼を引き止めちゃったんだ。


「こんなに遅くまで引き止めちゃってごめんね」


「いや、俺の方こそ、こんな時間までいて悪かったな」


桜井君と一緒に玄関へ向かう。


「お兄ちゃん、また未来と遊ぼうね」


「ねぇ、お兄ちゃん。今度は俺とゲームしようぜ!」


「おう。今度ゲームやろうな」


後からやって来た翔と未来の頭を撫でる桜井君。


彼の学校では見せない柔らかな表情はレア物だよ。


3人の光景を眺めていると


「水野、ちゃんと湿布を貼り変えておけよ」


「えっ!あ……うん」


桜井君、まだ足のこと気にしてくれてたんだ。


彼に言われてハッと我に返った私はうなずいた。
< 39 / 297 >

この作品をシェア

pagetop