恋する5秒前~無愛想なキミと~
「じゃあ俺、帰るから」
「気をつけて帰ってね」
「お兄ちゃん、バイバイ」
「お前たち、姉ちゃんの言うことをよく聞くんだぞ」
「はあい!」
桜井君はサッと手を上げると出ていった。
「疲れたぁ」
「姉ちゃん、大丈夫かよ?」
「タマちゃん、どうしたの?お腹痛いの?」
その場にへたりこむ私を心配そうに覗き込む2人。
「大丈夫。ちょっと疲れただけだよ。さあ、お風呂に入る準備をしようか?」
「未来、お手伝いする」
やっといつもの生活に戻ったよ。
桜井君は我が家の初めてのお客さまかぁ。
まさか桜井君が家に来てくれるとはねぇ、香奈が聞いたらびっくりするだろうな。
彼と同じクラスになって2ヶ月、まだ打ち解けて話せるほど親しくない。
だから、近寄りがたい人だと思ってた。
でも、実際に話してみると、ぶっきらぼうだけど本当はとても優しい人なんだって気づいたんだ。
レアな表情も見れたことだし、今日は疲れたけど内容の濃い1日だったなぁ。
でも、どうしよう?
あんな姿を見られちゃって、明日桜井君にどんな顔して会えばいいんだろう?
新たな問題に私は頭を抱え、その日の夜はなかなか寝つけなかった。