恋する5秒前~無愛想なキミと~

「なんだ、桜井。授業始まってるぞ」


「すいません。トイレに行ってました」


桜井君は先生に言われて謝った。


さっきの出来事が尾を引いてるのか、桜井君、機嫌悪そう。


やだな、顔を合わせるのがちょっと怖いな。


私は教科書に視線を落としたまま彼が横を通りすぎるのを待った。


ガタンと音がして、しばらくすると先生の授業が始まった。



あ~あ、今日の授業は全然頭に入らなかったな。


あれから桜井君とは目を一度も合わすことはなかった。


だって、もし顔を合わせたらまたなにを言われるのか分からないもの。


香奈に相談してみようかな?


頭の中で悶々と考えていたら


「タマちゃん、今日は元気ないね」


「えっ?」


「桜井君とケンカしちゃったの?」


保育園の帰り道、手を繋いで歩いていた未来に突然言われたんだ。

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