恋する5秒前~無愛想なキミと~
背伸びすれば取れるかなぁ?
やってみて取れなかったら脚立を借りよう。
私は思いきり背伸びをして手を伸ばした。
残念。本を僅かに触るだけで取り出せない。
チビの私にはこれが限界。
仕方ない。脚立を借りてこよう、そう思っていたら。
あっ!私が取ろうとした本が。
横から手が伸びてきたかと思うと、お目当ての本が誰かに取られてしまった。
「この本だろ?」
目の前に差し出された本を受け取りながらお礼を言おうと横を向いたら……桜井君!
どうして、図書室に?
「あ、ありがとう」
内心、驚いてる私はお礼をひと言言うだけで精一杯。
「お前、チビなんだからムリすんな」
そう言って桜井君は笑いながら私の頭をコツンと軽く叩いた。
私もつられて笑顔を見せた。
久しぶりに見た桜井君の笑顔。それが見れただけでも嬉しかった。