恋する5秒前~無愛想なキミと~

「本が取れなくて困ってたから助かったよ。桜井君も本を借りにきたの?」


「俺?本を借りに来たわけじゃねぇけど」


「そうなの?」


じゃあ、どんな用事で来たのかな?


静かな図書室の中。私達の話し声しか聞こえてこない。


「悪かったな」


ボソッと呟くように桜井君が言った。この前のことを謝っているんだって直ぐに分かったよ。


「えっと……あの、私も」


私も桜井君に謝らなきゃ。


「私も、その……言い過ぎちゃってごめんなさい」


謝ったら胸に支えていたモノがスッと消えていったんだ。


良かった、すんなり言えたよ。


まさか、こんな場所で仲直りができるとは思わなかったな。


「ま、水野に言う通りだよな。俺たちはクラスが同じってことだけで関係ねぇもんな」


「えっ?!」


「余計なことを聞いたりして悪かったな」


「あっ、あのっ」


桜井君は一方的に話すと「じゃあな」とひと言残して行っちゃった。


図書室のドアが開く音がしたかと思うと


「隼人~、もぉ、探したんだからぁ~、どこへ行ってたのぉ?」


どこからか女の子の声が聞こえてきた。
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