恋する5秒前~無愛想なキミと~
「うるせぇなぁ。俺がどこ行こうとお前には関係ねぇだろ」
「え~っ、そんなこと言わないでよぉ。今日の帰りに寄りたい所があるから隼人に言っておこうと思って探してたのにぃ」
「なんだよ、遥。そんなことわざわざ言いに来たのかよ。帰る時に言えよ」
「あっ、ちょっと待ってよぉ、隼人!」
パタパタと足音が聞こえていたけれど、しばらくすると足音は止んだ。
静かな図書室にいると、廊下での会話はある程度まで聞こえてくる。
なんだ、桜井君。
高森さんと付き合ってたんだ。
陽子ちゃんが言ってた話しは本当だったんだ。
さっきまで浮かれていた自分が恥ずかしくなってきたよ。
そうだよね、私たちはただのクラスメイト。
ただ、それだけ。
だから何かあっても詮索はしちゃイケないんだ。
でも……心の奥から溢れてくるこの感情はなんだろう?
苦しいような、悲しいような複雑な気持ち。
初めて味わうこの感情はなんなのか分からなくて、私は胸に本をギュッと抱えてその場に立ち尽くしていたんだ。