恋する5秒前~無愛想なキミと~
◇一通の手紙

「どうしたの、環?浮かない顔して、図書室でなにかあったの」


「えっ、そう?」


私は相づちを打つと、香奈に視線を合わせることなく、教室のある一点を眺めていた。


桜井君、戻ってきてたんだ。


彼は教室の窓際の椅子に座ってクラスの男子たちと一緒にスマホを片手にして話している。


高森さんと一緒じゃなかったのかな?彼女と一緒に歩いて行ったような気がするんだけど。


「……環、ねぇ環ったらっ!」


「えっ!あっ、なに?どうしたの、香奈」


「どうしたのはこっちのセリフよ。図書室から戻ってきたと思ったら、 ボーッとしたりして変だよ」


「そ、そう?そんなつもりはないけどな」


桜井君とのことは、ここでは話したくない。


このモヤモヤする気持ちはなんなのか。


自分でもどうしたらいいのか段々と分からなくなってきちゃったんだ。


誰かに話して相談に乗ってもらいたい、そう強く感じた私は


「ねぇ、香奈。明日の放課後、時間ある?」


明日なら里美ちゃんがお休みだから、未来たちのお迎えに行かなくていい日なんだ。
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