恋する5秒前~無愛想なキミと~
◇王子様表れる
夏休みに入るまであと1週間。
梅雨もすっかり空けて、夏空全開。
朝から厳しい暑さが体を襲ってきて、体力が既に消耗していた。
香奈と二人。
お昼休み、食堂から戻ってきて教室の中でダラダラしていると、急にクラスの女子がざわめき出した。
「王子だ」
「隣のクラスなのに、どうして?」
女子たちの囁く声が私の耳にも入ってきた。
「水野さん、ちょっといいかな?」
机に突っ伏していた私は呼ばれて顔を上げて、目の前に佇む一人の男子と視線を合わせた。
「瀬戸くん、どうしたの?」
一ヶ月前にも同じように彼から声を掛けられたっけ。
そのときは桜井君に邪魔をされて話を聞けなかったんだよね。
なんの話かな?
側にいる香奈の顔をチラリと確認する。
「瀬戸ちゃん、相変わらず王子様だよねぇ」
「なんだよ、小森。王子様って……」
暑さのせいなのか、香奈は訳の分からないことを瀬戸くんに言って困らせていた。