恋する5秒前~無愛想なキミと~

「うん。まあ、夏休みに入るまでに聞けたらいいんだけど、水野さんにはよく考えてもらいたいから任せるよ」


「私に任せるって言われても」


「そんな顔すんなって。俺、待ってるから。それとこれ、俺のスマホの番号、それとLINEもやってるから」


手渡されたのは小さな紙きれ。


キレイな文字で番号が書かれてあった。


「じゃあ、登録しておくね」


「できれば、返事をもらえるときは会って聞きたいから連絡して」


「うん、分かった」


瀬戸君は教室内の騒ぎにも我関せずに淡々と私に話すと


「俺、次は体育だから。じゃあ、またな」


「またね、連絡するから」


爽やか王子というあだ名を付けられてるくらい、瀬戸君は爽やかな笑顔を振り撒いて教室から出て行ったんだ。


「瀬戸ちゃん。とうとうやってくれたねぇ。しかも強硬手段でくるとは、ある意味挑戦状を叩き付けたってことかしら?」


香奈はぶつぶつと一人で呟いている。


「香奈、強硬手段ってどういうことなの?」


「なに、環?」


「さっきから一人でぶつぶつ言ってるから、どうしたのかなって聞いてるのっ!」


「あぁ、なんでもない、環には関係ないことだから、気にしないで、ねっ?」


私に聞かれて慌てて取り繕う香奈。しかも愛想笑いまででているし。
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