恋する5秒前~無愛想なキミと~
「ここへ来るまでの間にさ、あんたと瀬戸君の話をしてる子が何人かいたからね、何かイヤなこととか言われなかった?」
「ううん。私、今日は学校へ来たの早かったから、誰とも会わなかったよ」
本当は昇降口で瀬戸君と会って教室まで一緒に来たけどね。
今日は早く来て良かった。
いつもの時間に登校していたら、誰かしらに嫌味のひとつでも言われていたかもしれないな。
「誰にも会わなかったってことは、ずいぶん早く来たってこと?」
「うん、30分早く家を出たよ」
「30分!」
目を丸くして驚く香奈に私は頷いた。
「夏休みに入るまで早く家を出ようかと思ってるんだ」
「マジで?」
朝が弱い香奈からすれば考えられないのかも。
「早起きなんて私には到底ムリ!拷問に近いんだから」
よくできるよね、なんて香奈は感心した様子。
「だって、その方が朝から余計な神経を使わなくていいんだよ。夏休みに入ったら、私達のことなんて忘れちゃうと思うよ」
後1週間もしないうちに夏休みに入るんだ。
そうすれば、この騒動も収まるはず。
ううん、収まって欲しい!