世界はまだ君を知らない



「体、冷えただろ。風呂もすぐに沸くだろうから先に入れ」

「えっ、でも仁科さんの方こそ寒いでしょうし先に……」

「お前が先だ。シャンプーとかも、好きに使って構わないから」



仁科さんはそう言いながら私の背中を押して、リビング横の浴室へ押し込むように案内をする。

その強引さにそれ以上強く断ることは出来ず、渋々先にお風呂を借りることにした。



いいの、かな。泊めてもらうだけでも有り難いのに、先にお風呂まで借りて……。

けど、『公私混同はよくない』と家にあがらせてくれなさそうな彼が、こんなにもあっさりと自宅に招いてくれたことに、少し驚きながらも嬉しいと思えている。



……まぁ、『帰宅できない部下の面倒を見るのも役目だ』とか言いそうだけど。



そうだよね。部下だから、だもんね。

そう苦笑いを浮かべて、脱衣所でそっと服を脱いだ。





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