世界はまだ君を知らない
「俺は全く構わないが……寧ろ頼んでいいのか?」
「はい、大したものは作れないですけど……」
「じゃあ頼む。冷蔵庫のもの自由に使ってくれ」
仁科さんはそう言うと、私のまだ少し湿った頭をぽん、と撫で私が来た方向へと向かって行った。
任せてもらえた……よし、じゃあ手早く作っちゃおう。
そうリビングからつながった先にあるキッチンへ向かうと、冷蔵庫を開けた。
そして数十分と時間が経ち、いい匂いがリビングに漂ったところで仁科さんはリビングに戻ってきた。
「いい香りだな」
「あ、仁科さん。ちょうどよかった、今出来たところなんです」
黒いパーカーを着た彼の姿は、いつものかっちりとしたスーツ姿と違ってラフな雰囲気だ。
いつもは隠れた鎖骨が見え、はっきりとした肩の線が少し色っぽくて胸をドキッとさせる。
部屋着でも色っぽいなんて、反則だ……!
つい直視してしまう目をそらし、テーブルにお皿を置く。