世界はまだ君を知らない



そのお皿に盛り付けたのは、あんをかけた和風のオムライスだ。

冷蔵庫には意外といろいろ食材があって、玉ねぎ、ベーコン、きのことごはんを出汁と醤油で味付け、卵で包んでみた。



これだけ食材があるということは、きっと彼も普段から自炊をしているのだと思う。

キッチン姿……似合いそうだなぁ。

冷蔵庫からお茶のボトルを取り出す仁科さんを見つめて、そんなことを考える。



「短時間で作るとはすごいな、しかも美味そうだ」

「仁科さんのお口に合えばいいですけど」



褒められ、えへへと笑う私に、仁科さんはお茶をふたつのグラスに注ぎリビングへ戻る。

そしてソファに腰を下ろす彼に続いて、私も遠慮がちに少し距離を置いて座った。



「でもすごく積もって停電したりしなくてよかったです。私暗いの苦手で」

「そうなのか?」

「はい。さらに言うと雷も苦手だから、台風の時期は大変で」



改めてこうしてふたりきりになると、緊張してしまうのか、無意識に口数が多くなる。

けれど普通を装って、私は彼と「いただきます」とスプーンを手にした。



ちら、と横目で仁科さんを見ると、オムライスをひと口食べたその横顔は、少し緩む。


< 114 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop