世界はまだ君を知らない



「ハタチの時に、初めて彼氏が出来たんです。同い年の男の子で、私とあまり背丈は変わらなかったんですけど『背なんて関係ない、俺は翠が好きだよ』って言ってくれて……すごく、嬉しかった」



同じ大学の、たまたま隣の席に座った男の子。

最初は友達として過ごして、だけど優しい彼に次第にどんどん惹かれていった。



『……好きです』



怖かった。

けど、抑えきれなくて伝えた言葉に、彼は少し驚いて、『俺も』と頷いてくれた。



『わ……私でいいの?私、こんなんだし、見た目だって……』

『なんだよ、身長気にしてんの?背なんて関係ないだろ。俺は、翠だから好きなんだよ』



好き、と言ってくれた。

こんな私を見つめて、受け入れてくれた。



その言葉がどれほど嬉しくて、どれほど願ったものか。表すように涙がこぼれて止まらなかった。



それからは、ただ毎日が幸せで、彼といるだけで笑顔になれた。

手をつないで、触れるだけのキスをして、周りの女の子と同じように幸せを感じた。



……けどそれは、突然の終わりを迎えたんだ。



「付き合って一ヶ月が経って、初めて彼の部屋に泊まってそういう空気になって……けど、『やっぱり無理だ』って、言われちゃったんです」



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