世界はまだ君を知らない



彼の部屋で、キスをして、ベッドに押し倒された体。

初めての経験にドキドキと心臓がうるさくて、どうしようもなくて、だけど彼とならと目を閉じた。



……けれど、それ以上彼の手が私に触れることはなくて、不思議に思い目を開くとそこには気まずそうな彼の顔があった。



『どうかしたの?』

『……ごめん。やっぱり、無理だ』

『え……?』



それは、拒絶の言葉。



「彼、もともと私のこと女としては見てなかったらしくて。『抱けば好きになれるかと思ったけど、そもそも女性として見られない』って、そう笑われて」



『好きって言われて、俺もって言っちゃったけどさ……正直、翠のことは男友達に近い感じっていうか』

『男、友達……』

『それでもヤれば変わるかもと思ってたんだけどさ、それも無理だわ。そもそもお前のこと、女として見れないみたい』



男友達

無理

女としては見られない



彼が嗤って言った言葉に呆然とするしか出来なくて、怒ることも、泣くこともできなかった。



そこでようやく、夢から覚めた。

いつか、なんて訪れないこと。

王子様は、皆に平等には現れないこと。






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