世界はまだ君を知らない
そうだよね。助けてくれただけでもすごいことなのに、更にうずくまった人の相手だなんて、そこまで面倒見切れない、よね。
見た目は女性らしさなんてないのに、こんなことで怖がったりして、情けないとか思われたかな。
あぁ、かっこ悪い。もう、やだ。
まだ震えてうまく力が入らない足に、『止まれ』と言うように拳で小さく殴る。
その時、突然視界に入り込んだのは、1本の小さなペットボトル。
「え……?」
差し出された、『ホットミルクティー』と書かれた280mlサイズのペットボトルから顔を上げる。
そこには先ほどのメガネの彼が目の前にしゃがみそれを差し出してくれていた。
「甘いもののほうがいいかと思って選んだが、ミルクティーは苦手か?」
「えっ……あ、いえ!好きです、けど……」
突然のその行動に驚きのほうが大きく、動揺を隠せずにいると、彼は笑顔ひとつ見せずに私の手にペットボトルを握らせた。
「怖かったな。温まって少し休んでから帰るといい。それまで、俺も付き合うから」
いなくなっていたのは、帰ってしまったわけではなくて、私のためにこれを買ってきてくれていた?
『怖かったな』
なんて、私が感じた恐れや震えを、全て包み込むように。