世界はまだ君を知らない



「合コン?あー、私はいいかな」

「えー?残念〜。千川さん……はいつも行かないですもんねー?」



一方で、毎回断ってしまっている私に対して梅田さんが向けるのは『今回も行かないんですよね?』と期待していないという顔。



合コン、かぁ。

確かにいつもなら『行かない』と即決してしまうけど……。



「うーん……一応、考えておくね」



その私の返事に、ふたりは声をそろえて「え!?」と大きく驚いた。



「せ、千川さんどうしたんですか!?珍しい……」

「ちょっと勇気出して、恋愛とかしてみようかなって」



梅田さんのように、ひっきりなしに彼氏がいる人にこんなことを言うのは少し恥ずかしいけれど。

笑いながらそうこぼした私に、松さんは眉を寄せた。



「けど……翠くん、気になってる人いるんじゃないの?」



『気になってる人』、その言葉から頭にすぐ浮かぶのは、仁科さんの姿。

だけど、その想いはかき消して。



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