世界はまだ君を知らない
「つーか千川は本当胸ないよなぁ。全体的に薄っぺらすぎ!」
そしてそう言いながら、ポンポンと私の胸元を叩いた。
「ぎゃっ!?」
むっ胸!?
いきなりなにをするの!!
驚いてつい声を上げながら胸元を庇う私に、藤井さんはおかしそうに笑った。
いつものように、気にしていないように笑うべきなのかもしれない。
けれど、さすがに胸に触れられてそんな反応はできない。
いやだ、不快、そう思うのに。強く拒否してこの前のように言われるのが怖い。
『誰がこんな男みたいな奴のケツなんて触るかよ!!』
そんな見た目のくせに、って、思われるのが怖いから。
……笑うんだ。笑って、軽く流すんだ。
「なんだよ千川〜、そんな女子みたいな反応しちゃって……」
続いてまた伸ばされそうになった手に、ビク、と身構える。
するとその手をガシッと掴んだのは、私の目の前の仁科さんだった。