世界はまだ君を知らない



へ?梅田さんを、退けて?

ということは仁科さんと梅田さんの間にはなにもなくて、むしろ仁科さんは断って、こんなにも頬が腫れるくらい勢いよく叩かれるようなことを言って……あれ、もしかして。



「……まさか、またデリカシーのないこと言いました?」

「……別に、正直なことしか言ってない」



それがきっとデリカシーのないことなんだと思うけど。



本人も『正直なことしか』と言いつつも、それが叩かれた原因だと分かっているのだろう。

じっと見る私から目をそらすと、渋々口を開く。



「押し倒されて『付き合ってほしい』と言われたから、『悪いけどお前に対する好意で送り届けてるわけじゃない』って伝えた」

「……そんなにバッサリ言えば、そりゃあ叩かれますよ」



『落としてみせる』と息巻いていた梅田さんも、そんな断り方をされるとは思いもよらなかっただろう。

『なによ!!』と目を釣り上げて、本気で腕を振り上げる姿が想像つく。

それとともに、すっかり腫れた仁科さんの頬から、あの細い腕にかなりの力があったのだと知る。



「それに俺は、ただの千川の代わりだ」

「え?」



私の、代わり……?

その言葉の意味を問うように見つめれば、その目は真っ直ぐにこちらを向いた。



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