きみのためのプレゼント
七夕の奇跡
「もう二度と走れなくなりますように」

「もう一度走ることが出来ますように」



六月下旬、衣替えも終わり、テレビでは梅雨明けも発表された。ジリジリと照りつける太陽。本格的な夏がもうすぐやってくる。



私の嫌いな季節だ。虫は増えるし、制服がベタベタと張り付く。


それに、全国陸上競技大会がある。



陸上部の強豪校である浦賀高校に推薦で入り、瞬く間に記録更新。


一年にも関わらず、八月に行われた全国高校陸上競技大会の百メートルで、選手に選ばれた。


そして、結果はもちろん、一位。


誰よりも努力をして、掴み取ったものだと自信があった。だから、陰で何を言われても、私に勝てないくせに何を言ってるんだと同じ陸上部の人間を小馬鹿にしていた。


そう。去年までは。



天狗になっていた罰が当たったのだろうか。今年の春に行われた春季競技会の百メートルで十名中、六番目にまでタイムが落ちた。


それをきっかけに転がるように転落した陸上生活。


誰よりも努力することに変わりはないけれど、誰よりも速い自分はもういない。


そして、去年出場することの出来た全国陸上競技選抜大会も選手から外された。
< 1 / 141 >

この作品をシェア

pagetop