きみのためのプレゼント
ほんの少しの勇気
お姫様抱っこを堪能した藤本くんは、そのまま、満足げに私を抱えたまま、落ちてきた階段を一段、一段と上っていく。


「んっ、目に、前髪が」


数段上ったところだろうか。ジメジメとした蒸し暑さに、少しだけ風が通り抜ける。涼しくて気持ち良かったものの、前髪が目を覆った。


最近、少し伸びかけの前髪がうっとおしかった。陸上に邪魔だから私の髪は耳下までのショートボブ。

当然、染めたことなんてない。でも、前髪は結構目にかかるくらいの長さ。


美容院にわざわざ前髪だけ切りに行くのも面倒だし、自分で切るのは一度、失敗して以来やっていない。


それに私は、末広型の奥二重に近い、二重瞼でキリッとした印象を持たれるので前髪はあまり短くしたくない。


そうしたこともあり、放置していた前髪は勝手に伸び、今に至る。でも、そろそろ切ろうとは思っていた。


早めに美容院でも行こうかと思っていると、私が前髪を除けようと首を降っている仕草を藤本くんに気づかれてしまった。
< 22 / 141 >

この作品をシェア

pagetop