きみのためのプレゼント
気持ちはイライラ。

早く乗り方を教えてくれたらいいのに。こんなのいつまで経っても埒があかない。


「だから、私・・・」


「藤野さん。俺たち、まだお互いのこと、何も知らない。だからさ、言わなくても分かるはまだ通じないよ」


もう一度、苛立つ気持ちでぶつけようとした言葉は、突然目の前までやってきて、車椅子の肘当てに両手をついた藤本くんによって遮られてしまった。

更に顔を近づけてくる彼に、さすがの私も動揺を隠し切れない。


「な、何?」


「いや、今までは、藤野さんの走る姿ばかり見ていたけれど、こうやってジッと見つめていてさ、藤野さんって、すごく可愛い顔しているなと思ってさ」


「は?バ、バカじゃないの?」


何なの、この男。軽すぎる。車椅子に乗ってなかったら間違いなく、チャラ男まっしぐらに決まってる。


「前髪、絶対もっと短いほうが可愛いよ」


「・・・触らないで。さっきから思ってたけど、藤本くんってちょっと馴れ馴れしいよね?私、触られるのとかそういうの・・・」
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