きみのためのプレゼント
自分の境遇に胡座を掻いて他人にいつも迷惑をかけている。そのくせ、ヘラヘラといつも笑っていて、自分に甘い。

好きじゃない。


それなのに、最近、毎日のように彼は見学に来るようになった。誰も何も言わないけれど、走ることすら出来ない彼が見学に来るなんて無駄だとしか思えない。


私の睨みも全く気にすることなく、結局、彼は下校時刻ギリギリまで帰ることはなかった。


部活を終えた帰り道。夏が近づいているからか、日は長い。夜の七時前だというのにまだ街灯もついていない。


何校も推薦の話があったけれど、私が浦賀高校に決めたのには、徒歩で通えるという安易な理由もあった。


部活をめいっぱい頑張りたい。

だから無駄なことはしたくない。
電車通学なんて論外。


高校から家までは徒歩十五分ほど。帰り道には浦賀川の土手を通る。春には桜が満開で川へと続く階段を下りると澄んだ川に魚が泳いでいる。



部活が休みの日には土手を走りこみ、そして、スポーツドリンクを階段に座って飲むことが密かな楽しみになっていた。



明日からテスト期間。


しばらく、部活は休みになる。また、この土手を走りこもう。そう、考えながら歩いていると後ろから誰かを呼ぶ声が聞こえてきた。
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