きみのためのプレゼント

「・・・沙織。もう落ち着いた?今日の様子を見ていると、あなたやっと落ち着いたようで安心したの。彼に話したのね。あっ、ごめんなさい。私ったら。さっきから言われたくないことばかり、ごめんなさいね。今日は沙織の好きなオムレツにしたわよ」



運転席から聞こえてくるお母さんの言葉に、何を答えたらいいのかわからず、黙り込んでいるとお母さんは勝手に自己完結してしまった。


落ち着いた?彼に話した?これは全て、藤本くんの境遇なのだろうか?


足だけが変わったわけじゃない。藤本くんの境遇も私のものと変わってしまったみたい。



ということは、彼は陸上部のエース。いや、うちに男子陸上部はないから、それはない。


だとすると彼は、どんな境遇になったのだろう。


また、彼に聞きたいことが増えた。


それにしても、一度も治らない足のしびれ。違和感。何がこれから待ち受けているのかわからない不安。


さっきからそんなものが頭の中をよぎる。これからどうなるのかな。でも、それを忘れさせてくれるような温もりが私を迎えてくれた。


私は、家族が好き。

心配性だけれど優しいお母さん、寡黙だけどいつも見守ってくれるお父さん。もう家は出てしまったけれど、いつも私を気にかけてくれるお兄ちゃん。甘えん坊の5つ下の可愛い弟。



口には出さないけれど、私はそんな家族が大好き。でも、陸上に一直線な日々に家族ともゆっくり過ごす時間を疎かにしていた。



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