きみのためのプレゼント
晩御飯は本当にゆっくりと食べることが出来た。問題はお風呂。彼がどうやってお風呂に入っているのかなんて、当然知らない。

でも、今日は汗をかいただけでなく、転げ落ちたのだから絶対にシャワーは浴びたい。


そういえば、藤本くんがつたい歩きなら出来ると言っていた。それならお風呂場までつたい歩きで行けば、シャワーを浴びれるのでは。


そんな安直なことが、頭を過ぎったけれど、どうやってここから部屋まで戻り、着替えを持ってつたい歩きでお風呂場まで行けばいいのだろう。


「沙織、疲れたでしょ?お風呂、入っちゃいなさい」


「う、うん。じゃあ入るね」


とりあえずテーブルを支えに立ってみる。痺れはあるものの、なんとか立てないわけでもない。でも、立ち上がるだけでこれだ。ここからどうすればいい?


「お姉ちゃん、部屋戻るならあれいるよね?取ってくるね」


充がそう言って、リビングを後にし、しばらくして戻ってきた。手には松葉杖を持って。松葉杖。そうか。これで家の中を行き来すればいいのか。

これならつたい歩きよりも歩きやすいかも。


そう思って充から松葉杖を受け取る。でも、一瞬で失望した。使い方がわからない。それにどちらかの足を庇って歩くわけでなく、終始痺れた足で歩かなくてはいけない。


きっと、彼ならそれを慣れたようにやってのけるのかもしれないけれど、私には無理だ。
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