きみのためのプレゼント
しびれはある。でも、なんとか頑張れば、立てないこともないし、歩けないこともないのでは?ベッドからゆっくりと起き上がる。これは上半身だけで起きあがれるから問題ない。


今度は、ゆっくりと両足をベッドから下ろす。いきなり、両足を下ろすのは怖いから、両手で太ももを挟み込んで下ろした。


「できた」


思った通り、なんとか両足を下ろすことができた。松葉杖はまだ使える気がしないから、ベッドを支えに、立ち上がってみる。


これもなんとかできた。問題はここから。さあどうやって部屋から出よう。


ピリピリとしたしびれは止むことがないけれど、これ以上酷くなる気がしない。つまり一定のしびれを我慢すれば歩けるのではないか。


「じゃあ、歩こうと思えば歩けるかもしれない」


私は、無知だった。彼の足について。だから正直、この時は藤本くんが、しびれごときも我慢できないひ弱な男なんだという風に思っていた。


「ほら、やっぱり歩けるじゃない」


つたい歩きなんてしなくても、しびれを我慢すれば歩くことができる。確かに歩行困難だと言われればその通り。普通の人よりも歩くペースは遅いし、一歩歩けば止まってしまう。


でも、それはリハビリか何かをすれば徐々に良くなっていくだろうし、それをしてこなかった彼は、やっぱりただの甘えだ。


「お母さん、昨日はごめんね。もう、大丈夫。ほら、見て!私、すっかり歩けるようになったでしょ?」


一歩進んでは、立ち止まる。それでも進めなくはないと、自分の部屋を出てリビングに向かう。


普段は一瞬のこの距離が、今は果てしなく、遠く感じるけれど、それでもゴールは見えている。
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