きみのためのプレゼント
そして、ようやくたどり着いたリビングへのドアを開け、お弁当を作ってくれていたお母さんにニコリと笑顔で話しかけた。


お母さん、びっくりしてるだろうな。私がここまで歩けるなんて思ってなかったと思うし。


でも、お母さんは私の思いとは、全く逆でパタパタとスリッパの音を響かせながら、血相を変えて、私の元へとやってきた。


「何してるの!早く座って。トイレに行きたいならお母さんを呼んでちょうだい」


あまりのお母さんの気迫に、「ごめんなさい」と一言。私、何かした?普通に少しのしびれを我慢して歩いてきただけなのに。お母さんを安心させてあげたかっただけなのに。


ソファに座って、お母さんを見ると忙しそうにお弁当を作ってくれていた。別に、これくらいのしびれならお弁当を作るお手伝いもできるし、なんだって自分でできる。


そう、思えたのはまだ、テレビを見る余裕があったときまで。異変を感じ始めたのは、ちょうど、お父さんが起きてきた七時前くらい。それまではお母さんに言われたように座って、ボーッとテレビを流し見していた。


「痛い」


最初に感じたのは、しびれではなく、痛み。それが段々と広がって、針で刺されるようなピリピリとした痛みが足の裏全体に走る。


しびれはなんとか我慢できた。でも、焼けるようにピリピリとした痛みは我慢強いはずの私でも耐えられない。
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