きみのためのプレゼント
「沙織、藤本くん、入ってもらったわよ」


お母さんの後ろに立つ藤本くんは、最初、私に笑みを浮かべていたけれど、私の横に置いてあった病院の袋を見つけた瞬間、目の色を変えて、駆け寄ってきた。


「薬、飲んだの?」


「うん。飲んだ。すごく足に激痛が走って痛くて痛くて、耐えられなくて」


「気分は?悪くない?吐き気とか、胸が苦しいとかそういうのない?」


気分は悪くない。吐き気も胸が苦しいもない。でも、飲んだばかりだからか、まだ刺すような痛みは治らない。

そんな私の頭をフワリと撫でた藤本くんは立ち上がって、お母さんに声をかけた。


「すみません。実は、僕の知り合いも沙織さんと同じように足の神経に異常をきたし、歩行困難になっているんです。なのでわかることが多いと思います。これからもし、彼女に何かがあれば、薬を飲ませる前に僕に連絡をくれませんか?」


「沙織と同じような人がいるんですか?」


「はい。なので僕を信じて、沙織さんのことはすべて任せてくれませんか?僕に沙織さんを守らせてください。お願いします」


ここは見慣れたリビングで、流し見していたテレビはつけっぱなしのまま。でも、昨日とは全く違っていて、藤本くんがここにいて、お母さんに私を任せてほしい、守らせてほしいと頭を下げている。

守る?誰かに守ってもらいたいなんて一度も思ったことなかった。


でも、『守る』という言葉がこんなにも安心をくれる言葉だということ、そして、胸が高鳴る言葉だと私は、二回目の彼の言葉で知った。
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