きみのためのプレゼント
その一言が言えなくて
今、リビングはとてもピリピリとしたムードに包まれていた。身支度を整えたお父さんが藤本くんにいきなり噛み付いたからだ。


「知り合い?知り合いがいるから任せてほしい?守らせて欲しいだ?そんなの頼んでもいないし、君に任せて何になる?勝手にヒーロー気取りでいられても迷惑だ」


体格が良く、二重だが、眼光の鋭いお父さんからかなりの威圧感を感じる。でも、そんなお父さんにひるむことなく、藤本くんは言葉を続けた。


「その薬は『リリカ』所謂、鎮痛剤ですよね。副作用もめまいや眠気なんかの軽いものが普通。でも、ごく稀に呼吸困難や吐き気を催す恐れもある薬ですよね?そんな薬を簡単に飲ませてしまっていいんですか?」


副作用がごく稀とはいえ、呼吸困難や吐き気。それを聞かされて、そんな副作用がしびれにプラスされたらと思うとゾッとした。


でも、彼がその副作用を知っているということは経験をしたからだ。


「だからなんだっていうんだ。ごく稀に起こる副作用なんて・・・」


「あなた、『リリカ』は前のあのときの薬なの。だから飲ませたくなかったんだけど、本当に沙織が痛そうだから渡したの。覚えてない?この子が足のしびれを発症したすぐのこと。あの時も歩けると無理をして、激痛を伴い、処方されてた『リリカ』を飲ませたでしょ?」


お父さんは、それまで怒鳴るような物言いだったのに、すぐに口を噤んだ。その状況を思い出したのだろう。つまりそれは、藤本くんの過去を表している。


彼も一度、私と同じように無理をして歩いて激痛を経験した。そして、この『リリカ』で副作用に苦しんだんだ。
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